バラの包みの…
ある日、友人Kとホテルに泊まる事になりました(いきさつは不明、夢の中では恋人同士に設定されていたようでした)。某「バラの包みのデパート」内にあるホテルへ向かい、チェックインなどを済ませボーイさんに部屋まで案内してもらいます。あたし達の部屋のホールを挟んで向かい側は、寝装寝具・タオル売り場でした。
部屋へ入り備え付けのローブに着替えシャワーなど浴びている最中、何やら外が騒がしく…。「俺見て来るよ」と友人Kが言い、部屋から出ます。何だろう?とあたしもドアから顔を覗かせます。
どうやらデパートの売り場の方で、精神に異常をきたした方が暴れているらしいです。何か訳のわからない事を口走りながら、手にしたフルーツナイフで売り場の羽根布団などをズタズタに裂いていて、手がつけられない状態のようです。デパートのお客様も店員も、遠巻きに眺めているだけでした。
辺りは当然の事ながらザワザワと騒がしく、時折売り場マネージャーらしき方が「○○君、警察に連絡を」とか「△△君、××××」などと店員に指示を出したりもしています。そんな中でホテルのローブ姿の友人Kが、ある店員さんを捉まえて「ホテルの方に被害が及ばないように」と進言をしている時でした。
精神に異常をきたした方が「ホテル」という単語に触発されたらしく、友人Kに斬りかかって来ました。いくらデパート内に併設されたホテルだからといって、風呂上りのローブ姿で救急車のお世話になるのは嫌だと思った(であろう)友人Kは、掴みかかって来た精神に異常をきたした方を何とか振りほどき、あたし達の部屋の方に逃げて来ました。
もちろん精神に異常をきたした方は友人Kを追ってきます。ドアに滑り込んだ友人Kが「早く鍵閉めろ!」と叫びます。とにかく鍵を閉め、部屋の中で2人。「支配人に電話を」と促され、備え付けの電話でフロントに繋ごうとした所で、内側に観音開きのドア(ホテルの部屋のドアが内側に観音開き、しかも木製って…)が押し破られ、精神に異常をきたした方が侵入してきてしまいました。
友人Kはドアもろとも倒れこみ、後ろ向きで電話を手にしていたあたしは髪を掴まれ、部屋の外に引きずり出されそうになり。友人Kが何か叫んでいましたが、聞き取る余裕なんてありませんでした。
何とかドアの下から出てきた友人Kがあたしを守ろうと、精神に異常をきたした方と揉み合いになります。あたしは依然髪を捕まれたまま、ついに部屋の外に引きずり出され…。
警察なのかデパートまたはホテルの警備員なのか、その辺りの方であろう方がやっと到着し、精神に異常をきたした方を取り押さえてくれました。精神に異常をきたした方は何やら叫びつつ、警備員だか警察官だかに両脇を抱えられどこかへ連れて行かれ、あたし達は髪を振り乱し着崩れたローブ姿のまま、ドアの壊れた中間照明の部屋で安堵のため息。
まもなくホテルの支配人がやって来ました。事件に巻き込まれたあたし達に型通りの詫びを言い、ドアが壊れた部屋では一晩過ごせないでしょう、と新しい部屋へ案内してくれました。今度の部屋のドアは外開きのスチール製のもので、簡単にぶち破られる事はなさそうです。
「荷物はボーイに運ばせます、忌まわしい事は忘れておくつろぎくださいませ。何かありましたらすぐにご連絡を、それではごゆっくり」と言い残し、支配人は部屋から出て行きます。ドアの鍵をして(念のため戸締りを確かめて)、2人してやれやれとソファに座り込みます。
少し落ち着こうと思い煙草を吸おうと思いましたが、まだ荷物が届いていません。新しい部屋と前の部屋は何部屋か離れているだけなので、取りに行くかという事になり、前の部屋へ向かうとそこは既にメイドさんが掃除を始めていて、あたし達の荷物は半端に開かれた(最初に部屋に到着した時に少し荷解きをした)状態のまま放置されていました。
メイドさんは部屋の掃除をしながら「まったく、片付きゃしない。早く荷物持ってってくださいよ」というような事をボヤいています。(すぐボーイに運ばせるって言ってたのに…)と思いながらもそれなりに荷物をまとめ、コートかけから上着を取り部屋を出ようとしたところ、先ほどの事件のせいでしょうか手や足が汚れていたため、バスルームで流させてもらおうと入りました。
そこは既に別のメイドさんが今掃除を終えたところで、入って来たあたしに対して「も?、今掃除したばっかりなんですから」と怒っています。
既に煙草を吸う気力もなく、新しい部屋でそそくさとシャワーを浴び直し、寝酒も呑まずにベッドに入り、無言のまま眠りにつきました。2人で楽しみにしていた夜は、こんな風に台無しになりました。