all over もう無理壊れる

昨日の夜中「無理だよ、あんな本物の狂ってる人には勝てないよ、無理だよ、あんな本物の狂ってる人には勝てないよ」ってずっと言ってる夢視た。

平均台の上で、すげー早口でスケール移動の激しい歌を歌わされて、その作者で歌手が本物の気狂いで、それと競わされる夢。

その勝負(のようなもの)はどうやら2回戦目らしく、(ということはおいらは1回戦は勝ったということなのか。何回戦まであるのかはわからないけど、この先もどんどん難易度が上がっていくことは明白で、そのまだたった2回戦目なのにもう物凄く恐ろしかったんだ。)見るからに恐い山姥のような婆様がおいらにやらせてるようだった。

婆様には何人もお付きのような感情と表情のない姉さんたちが従い、おいらはこの勝負に勝たなければあの姉さんたちみたいに感情を取り去られるのです。曲のイントロが始まって、平均台の向こうに本物の気狂いの人が感情のないマネキンみたいな姉さんに両脇を抱えられて連れられて来た時既においらはこの勝負に負ける事を悟り、それでもどうにか勝ち残りたくて必死で歌うのですが場に呑まれて口が回らず音符半分も歌えていないのです。

平均台は木で出来てて、空色のペンキが剥がれかかってる古いもの。部屋の真ん中に、それだけが置かれていた。床はピカピカのワックスがかけられた寄木の床。壁は白く、出入り口は気狂いの歌手が連れてこられた所しかなかったと思うけど、そんな余裕はなかったからよくわからない。

頭の中は「怖いよ助けて感情なくしたくないよ」ばっかりで充たされて、気狂いの歌手が連れてこられた入り口の上にかかっている巨大なモニタに映ってるカラオケの字幕みたいに色の変わっていく歌詞なんて何一つ読めやしねえ。初めて聴く曲の音譜は耳を素通りしてメロディやリズムなんて取れやしねえ。曲はどんどん進行していくし、作者の気狂いは両脇を感情のない姐さんたちに抱えられたままどんどん近付いてくる。

それでも恐ろしく早口で転調だらけなその難曲を歌い切らないと、おいらは婆様に付き従う感情のない姉さんたちみたいにすらならせていただけないのです。このミッションを終わりまで遂行しないと、ただ廃棄物として処分されてしまうのです。…何故それを知っているかといえば、1回戦目を勝ち抜いた結果、その敗者(彼はミッションを最後まで遂行出来なかったので)が処分されてしまう所を目の前で視せられていたから。

もう自分の歌はボロボロだったので、気狂いの歌手がまともに歌えば勝ち目はまるでなかった。つまり感情を取り去られることは殆ど決定していたのです。ただ、ほんの少しだけ対戦相手が気狂い故にまったく歌わずに居れば、ボロボロでも最後まで歌おうという気概を見せたおいらは勝ち残れるかもしれないという期待を抱かずにはいられなかった。気狂いの人は連れてこられてからずっとただ暴れていただけだったので。

つまりおいらはただ釣り堀の鮒みたいに口開けっぱなしで誰かの救いの手が垂らされるのを待ってる。ただ釣り上げられて苦しむのを待ってる(だって勝ち残ったら次の無理難題が待ち受けてる事をわかっていたから)。ただ待ってる。

あまりの恐ろしさに目が覚めた時、心臓バクバクで、手足は冷たくて、おいらの中身は恐怖しかなくて、ひたすら君の名前を頭の中で唱えていたんだよ。